福島の原発問題を映画にしたジル・ローラン氏の追悼セレモニーに参加して私が感じた事
曇りと雨が多いブリュッセルから日本の桜の風景を少し恋しく思うSenaです。
私は今2ヶ月間ベルギーのブリュッセルに滞在しているのですが、こちらは最近サマータイムが始まり日照時間が少し長くなりました。
ところで最近、日本人の自分にとってとても大切なセレモニーイベントがベルギーでありました。
それは、2016年にあったブリュッセルの地下鉄テロで亡くなった映画監督ジル・ローラン氏の追悼イベントです。
福島に残る人達の暮らしを追ったジル・ローラン氏とは
2011年3月11日、東北を未曽有の大震災が襲いました。
数多く被害を受けた東北のひとつ、福島では重大な原発事故が起こり、広い範囲の区域が放射能汚染の影響で制限されました。
そこに住んでいた多くの住人は止むを得ず住む場所を変えざるを得なくなりました。
ジル・ローラン氏は福島の現状を知り、今もなおその土地で生活を送る人々の”今”を撮った映画を製作しました。そしてもうすぐ映画が出来上がる最中、2016年3月22日に起きたベルギーの地下鉄テロに巻き込まれ帰らぬ人となってしまったのです。
福島の映画「Abandone land」(訳すると ”残されし大地”)が出来上がる直前に
ジル氏が逝去された後、彼を慕う多くのスタッフやプロデューサーが映画を完成させ、公開に至りました。
沢山の人に愛されていたジル・ローラン氏を偲び、この日は福島を舞台にしたこの映画を模して日本食が振舞われました。私はそのお手伝いをさせて頂きました。
ベルギーの人達に日本食を振舞おう
今回はベルギーに在住している日本人の方が指揮をとってらっしゃいました。
この日作ったのは唐揚げに鮭と卵で彩りを加えたそぼろご飯、味噌汁にどら焼きのフルーツ添えと盛り沢山!
なんとセレモニーに参加するゲストは80人近くだった為、用意する食事もかなりの量になります。
大量の下漬けした唐揚げに片栗粉をまぶしている最中。
唐揚げをひたすら揚げます。醤油と生姜の香りが立ち上って思わずお腹が空いてきます。右ではどら焼きの生地を焼いて製作中。
キッチンは監督と深い交流があったお知り合いの方のレストランをお借りしました。
ただフライヤーが無かったのでフライパンでひたすら唐揚げを無双に揚げまくりました。
写真中央のインゲンの胡麻和えも準備万端です。
準備の合間にもビールタイムは欠かせません。さすがベルギー!
このビールはKRIEK(クリーク)と言ってチェリーのフルーツビール。酸味と甘みが強くて女性に人気のビールです。
作業風景。現地のベルギー人の方達もお手伝いをされていて、とても楽しそうなのを見て自分も嬉しくなりました。
全ての段取りを終えて後は盛り付けていくだけです!
出来上がりはこうなります。これにお味噌汁とフルーツ添えのどら焼きがつきます。
ジル氏と交流のあった沢山の方が当日はこのイベントに参加していました。
日本食の感想は「見た目が綺麗!」「これで9ユーロなんて信じられない」「とっても美味しい!」と大好評でした。
ベルギーでは日本食ブームだそうです。
お味噌汁は抵抗無く飲まれる方も多いですし、電車の中でも日本食レストランでテイクアウトしたらしき照り焼き丼?を美味しそうにむしゃむしゃ食べている現地の女の子を見かけました。笑
「THE ABANDONE LAND ー見捨てられた大地ー」を鑑賞して私が感じた事
物語の冒頭は、多くの人が離れそこでゴーストタウンと化した町の通りやシャッターの音が鳴り響き、風に揺られ共鳴する草木の物音が印象的に響き渡ります。
そこで育まれる自然の”音”に静かに耳をすませ、ただ受け入れて聴き入る様子のジル氏の後ろ姿から始まります。
時が経っても草木は変わらず育ち、どんな事が起きてもそこで”生命"は続いていく。
そこに残って動物達の世話を続ける住民の方や、愛する故郷の福島で生活を送る住民達の日々はこれからも続いていく。
原発事故によって人が滅多に立ち入らなくなった福島は今もなお変わらず、そこで静かに時を刻んでいるという事実が胸に刺さりました。
何も変わる事の無い自然や時の流れの中で、自分達人間が自身の都合で原発を作りだし、
その原発で地球規模の被害がでてしまった事や自分のこれ迄の関心の薄さ、自身を含めた人間の身勝手さを考えられずにはいられませんでした。
福島の今の現状について私自身、考える機会は滅多に少なくなりました。無関心という言葉が当てはまるのでしょうか。
自分自身に対して、それで良いのか?と自分を見つめ直すキッカケになりました。
「原発?いや、結構です」という意味のステッカー。環境への意識が高いベルギー人達の中には反原発の声も高い。
ここベルギーにも大きな原子力発電所があります。歴史がとても古く、老朽化問題で現地では原発廃止の声が多く挙がっています。
ベルギーに住む人達にとって、福島での出来事は決して他人事では無い事の関心の強さを感じました。
熱心に映画に見入る現地の人達の姿を見て、日本人である自分自身は日本の問題についてどれくらい関心を持ち、
自分の意見を持っているのか考えさせられる体験となりました。
ジル・ローラン氏の遺作、「残された大地」の予告編はこちらから。